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命をつなぐ注射 — タレント犬レオと10種混合ワクチンの物語


命をつなぐ注射 — タレント犬レオと10種混合ワクチンの物語

(この物語に出てくる犬の名前は架空である。)

はじまりの朝

六月のある朝、湿気を含んだ風がカーテンの隙間から部屋を撫でた。カタリ、と小さくケージの扉が揺れる音がする。愛犬レオはもう目覚めていた。タレント犬として数々のCMや番組に出演してきた彼だが、今朝の彼の目は、どこか憂いを帯びていた。

「レオ、今日、行くよ」

私はそう声をかけると、彼は小さく尻尾を振った。今日、レオは10種混合ワクチンの接種日だった。犬ジステンパー、パルボウイルス、アデノウイルス... 多くの病から彼を守るための、大切な日。

不安と決意

動物病院までの道のりは、いつもより静かだった。レオはキャリーバッグの中でじっと外を見つめている。普段なら車内でははしゃぎまわるのに、今日はなぜか神妙な顔つきだ。

彼もわかっているのかもしれない。注射のこと、その痛み、その意味。そしてそれが、自分の命を守るものであるということを。

診察室の光景

「レオちゃん、こんにちは」

優しい声の獣医師が診察室に私たちを迎えた。レオは診察台の上で小さく震える。私はそっと背中に手を添え、「大丈夫、大丈夫」と囁く。

獣医師は丁寧に説明してくれた。10種混合ワクチンは強力な予防接種だが、副反応もゼロではない。だからこそ、事前の健康チェックが重要だ。

体温、呼吸、目の輝き。すべて正常。そしていよいよ、注射の瞬間が訪れた。

一瞬の痛みと永遠の絆

「いきますね。ちょっとチクっとしますよ」

針が彼の皮膚を貫いた瞬間、レオは一声も発さず、ただじっと耐えた。その姿に、私は胸が締め付けられる。彼は私のために、痛みに耐えてくれているのだ。

終わったあと、レオは私の腕に顔をうずめた。まるで「がんばったよ」と言っているようだった。

帰り道の青空

診察を終え、病院のドアを出ると、雨上がりの空が顔を出していた。雲間から差し込む光が、レオの茶色の毛並みを柔らかく照らす。

「ありがとう、レオ。ずっと一緒にいようね」

彼は軽く吠えた。それは「もちろん」とでも言いたげだった。

命を守るということ

10種混合ワクチン。それはただの医療行為ではない。それは、レオとの未来を守るための、約束の儀式だった。

私にとって、レオはペットではない。共に歩むパートナーであり、時には共演者であり、何よりも大切な家族だ。その彼の健康を守るためなら、どんな費用も、どんな時間も惜しくはない。

ドラマのような人生を共に歩むタレント犬レオ。その舞台裏には、こうした小さな戦いと大きな愛が存在している。

終わりに

数日後、レオは元気にテレビ番組の撮影現場を駆け回っていた。スタッフからは「さすがプロだね」と声がかかる。私はその姿を少し離れた場所から見守りながら、そっとつぶやいた。

「レオ、君は今日も最高の演技だったよ。でも、私にとっては、あの日の注射をじっと耐えた君こそ、本当のヒーローだ」


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