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生き物探検隊 - 爬虫類たちとの邂逅


生き物探検隊 - 爬虫類たちとの邂逅

その日、私は未知の世界へと足を踏み入れることになった。

夏の陽射しが真上から照りつける午後、私は「生き物探検隊」という名のイベントに参加するため、郊外にある自然学習センターへと向かった。自然と人間との距離を縮める体験型イベントとして話題になっていたが、今回のテーマは特に心が躍った。爬虫類。そう、あの冷たく、謎めいた目をした生き物たちとの対面だ。

開幕の鼓動

会場には子どもたちの興奮した声が響いていた。親子連れ、写真家風の男性、そして爬虫類マニアと思しき女性たち。さまざまな人々が集まり、まるで一つの部族のように好奇心で結ばれていた。

受付を済ませると、首から下げる隊員証が手渡された。そこには「第47回 生き物探検隊 - 爬虫類スペシャル」と印字されている。胸が高鳴る。私は一人の探検者として、この未知の世界へと挑む準備が整ったのだ。

最初の接触 - ヒョウモントカゲモドキ

最初に紹介されたのは、見る者を魅了する瞳をもつヒョウモントカゲモドキだった。飼育員が丁寧に解説する中、そっと手のひらに乗せられたその姿は、思いのほか温かかった。

「冷たいと思っていたでしょう?」飼育員が笑った。私は頷くしかなかった。見た目の印象とは裏腹に、トカゲの肌は柔らかく、まるでビロードのようだった。

名前の通り、豹のような模様が全身を彩っていた。じっとこちらを見つめるその目には、野生の静けさと、どこか懐かしさすら感じた。

次なる遭遇 - ボールニシキヘビ

次に登場したのは、私が最も恐れていた存在だった。ヘビ――ボールニシキヘビ。その名の通り、防御本能で丸くなることで知られるこの種は、初心者にも人気が高い。

だが、間近で見るとやはり圧倒される。滑らかな鱗、しなやかな動き、そして無表情とも言える顔つき。だが、スタッフの手からそっと受け取ると、不思議と恐怖は薄れていった。

「力を抜いてください。彼も、あなたが緊張してるとわかるんです」
その言葉に導かれるように深呼吸をすると、ヘビは静かに、まるで意思を持つかのように私の腕を登っていった。

その瞬間、私は確かに感じた。これは捕食者と獲物の関係ではない。生き物と生き物。異なる存在が出会い、共にある時間だった。

静謐なる帝王 - グリーンイグアナ

展示室の奥、静かに構えていたのは一匹のグリーンイグアナだった。威厳と風格。そんな言葉がぴったりの佇まいだった。

「触ることはできませんが、じっくり見てあげてください」
スタッフの声に応じ、私はしばし彼の目を見つめた。まるで数千年の歴史を背負っているかのような静寂。その存在感は、爬虫類という枠を超えて、まるで神話の中の龍のようだった。

そして終幕へ

展示を巡るごとに、私は少しずつ爬虫類たちへの偏見と恐れを解いていった。それぞれに個性があり、感情があり、そして何より「共に生きる」ことを教えてくれる存在だった。

最後に、参加者全員で記念写真を撮る時間が訪れた。ヒョウモントカゲモドキを肩に乗せたまま、私は笑っていた。誰かにその瞬間を見られていたら、まるで長年の親友と再会したような顔をしていたに違いない。

帰路にて

イベントが終わり、夕暮れの中、センターを後にする。ポケットには、小さなパンフレットと、一枚の鱗が入っていた。それは抜け殻の一部で、希望者に配られた「記念のかけら」だった。

私はその鱗をそっと掌に包んだ。冷たく、そして確かな感触。その中には、今日という一日の記憶が刻まれているように思えた。

生き物探検隊。それは単なるイベントではなかった。それは、私という人間が、命の多様性に触れ、新たな視点を得た冒険の記録だった。

またいつか、彼らに会いに行こう。あのまっすぐな瞳が、今もどこかで静かにこちらを見つめている気がしてならない。


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